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赤祖父先生、オーロラについて語る

2004年度に催行されたアラスカ講座に向けて、オーロラ研究の第一人者である赤祖父先生からお話をうかがいました。同年の「エルダーの旅便り」冬春号に掲載された内容です。

 

神秘の光 オーロラの話

わたしとオーロラとの出会い

オーロラは、自然現象のなかでもっとも壮麗な現象であるといわれています。極北の原始森や北極海の夜空に舞うオーロラは、それを仰いだ初期の北極探検家たちを「神なくして誰がこんな素晴らしい景観を思いつくことができようか」「豪華な景観を描写しようとしても、言葉ではもはや無駄である」と嘆息させました。一方、極北の原住民たちは、オーロラは天国にいく死霊の足もとを照らすたいまつの火、または死霊が天国にいく架け橋と考えていたという記録があります。


わたしのオーロラという言葉との最初の出会いは、子どもの頃、母親が時折、口ずさんでいた北原白秋作詩、中山晋平作曲の「さすらいの唄」でした。この歌のなかに、「行こうか、もどろうかオーロラの下を…」という歌詞があり、オーロラとはなにかと質問したことを覚えています。 そして母親が「遠い北国の夜空に現れる美しいもの」と答えてくれたのも覚えています。また、父親がジャック・ロンドンの『野生の叫び』の翻訳本を買ってくれたのですが、その最後が、主人公の犬が狼の群れをしたがえ、オーロラの下を走っていくところで終わるのです。


大学生時代、地球物理学という学問に興味を持ったのですが、そこでオーロラという言葉に再会し、気象・地質より、その研究に魅せられ、オーロラ研究のメッカであるアラスカ大学地球物理学研究所に入所しました。そしてそれ以来、オーロラ研究に携わってきました。


オーロラの原理

この荘厳な自然現象は、物理学では高圧真空放電と呼ばれる過程によります。むつかしく聞こえるかもしれませんが、みなさん馴染み深いネオンサインの原理と同じです。ネオンサインは誰でも見て知っているように、細いガラス管の空気を抜いて真空にし、わずかなネオンガスを注入して、ガラス管の両端に高電圧をかけると見ることができます。このガラス管のなかでは、電子が高速で走り(放電し)、ネオン原子に衝突してネオン原子が発光しているのです。地球の高層は真空に近く、そこで放電が起きると、超高層大気中の原子や分子に高速電子が衝突し、ネオンサインと同じように発光が起きます。この光は、わたしたちが日常でみる光、太陽から発せられている光とはまったく異なった光ですが、これがオーロラなのです。


さらに放電には電力が必要です。この電力はどのくらいか、そしてどこで作られるのか。わたしたちオーロラ研究者は人工衛星を駆使してこの問題に取り組んできました。そして、オーロラの放電に必要な電力は世界最大級の発電所の電力の1000倍以上の電力が必要であること、さらに、その電力は太陽から吹き出している超高温のガス(太陽風と呼ばれる)と地球磁場の相互作用によってつくられることをつきとめたのです。


この現象は、星や星雲の間でも常に起きています。ですから、オーロラは地球にもっとも近い場所で起きている宇宙現象ともいえます。それであるからこそ、オーロラは神秘に満ちた光であり、わたしたちを惹きつけてやまないのかもしれません。 


アラスカ大学国際北極圏研究センター所長
赤祖父俊一 Akasofu Shunichi

1930年、長野県佐久市生まれ。東北大理学部地球物理学科卒。大学院在学中にアラスカ大地球物理研究所に移り博士号を取得。現在、オーロラ研究の第一人者。1964年に教授、1986年に所長に就任。77年に日本学士院賞。79年に米地球物理学会からジョン・フレミング賞を受ける。時間が許す限りアラスカ講座において講師を務め、エルダー参加者をオーロラの世界へ誘う。

 

赤祖父先生へのインタビュー


Q アラスカ大学国際北極圏研究センターについて教えてください。
A 1999年に設立されたのですが、アメリカと日本をはじめ、フィンランドやロシアなど極地にかかわる国々の協力で運営されており、ここでは地球温暖化の研究も行っています。

Q 地球温暖化は、人類共通の課題として世界中が注目していますが、この地球温暖化について赤祖父先生はどのような見通しをお持ちですか。
A マスコミで流されている地球温暖化についての情報はやや疑問に感じる点もあります。日本のマスコミの方も温暖化の実態を取材しようと私のところを訪ね、「氷河や永久凍土が溶けだしている場所を教えてください」なんて言ってきます。写真を撮って記事にするというのです。もちろん場所は教えませんけど。(笑)

Q どうしてですか。
A それはね、氷河が溶けだしたりしているのは、実は必ずしも地球温暖化の影響であるとは断言できないからです。ところが地球温暖化が問題だといわれだし、氷河が溶けているという情報を聞くと、その原因が判明していなくても「温暖化で北極の氷が溶け出している」というような写真入りの記事を書く。

Q では、地球温暖化はそれほど深刻な問題ではないということですか。
A う〜ん、そうですね。むしろ温暖化より寒冷化のほうが人類に与える影響は大きいのではないでしょうか。今年、日本でも夏が涼しかったことによって米作に大きな影響がでましたよね。寒くなると食料に影響がでる。温暖化した場合、地球規模で考えるとかえって食料増産になるのではないでしょうか。それよりも、これから問題になるのは「水」ですよ。

Q といいますと。
A CO2よりもH2O、つまり水のほうが問題になると思います。水の管理ですね。農業用水や飲料水など人類の生活の基礎となる水をいかにコントロールするかが今後の重要な問題となってくると私はみています。

Q ありがとうございました。最後にエルダーの皆さんにひと言お願いします。
A わたしはエルダーのみなさまがオーロラに興味をもってくださることを嬉しく思います。しかし、オーロラについてなにひとつ知識を持たず、まるで花火でも見るようなつもりでアラスカにおいでになるのは実にもったいないことだと思います。オーロラは宇宙現象です。ぜひ少しでもよいから、オーロラについて知ってお出かけにかられることを期待します。

 

<インタビューを終えて>
 1時間ほどにわたるインタビューでは、オーロラの話題から、地球温暖化、日米の大学の違いなど、様々な範囲にわたるお話をお聞きかせいただきました。繰り返しお話されていたのが「せっかくアラスカまでくるならオーロラのことを知ってからきてほしい」ということでした。ご参考までに赤祖父先生のご著書を掲載しますので皆さまにもご一読をおすすめいたします。(浮)
『オーロラ その謎と魅力』岩波新書・2002年

 

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